定款は、いわば会社で一番重要な会社の決め事を定める憲法的な存在です。
定款では、株式の取り扱いや、役員の選任解任方法、また商号や目的等の基本事項など、様々なことを決めていきます。
弊所でも会社設立の際は、ある程度定型のものを使いつつ、各社の事情に応じて、ある程度オーダーメイドに対応していきます。割と大事なことも書いてあるため、適当に作成していると後々トラブルに巻き込まれる可能性もあります。
よく専門家と話し合い、今後の会社運営に支障をきたさないよう、じっくり定款を作成していきましょう。この記事では、定款を作成する際の注意点を、現役司法書士が紹介していきます。
(この記事では株式会社を前提に話を進めていきます。)
この記事の目次は以下の通りです。
- そもそも定款ってなに?
- 目的の決め方は?
- 公告の方法は官報?電子公告?
- 役員の任期は2年?10年?
- 資本金と株式発行数の決め方
そもそも定款って何?
株式会社を設立するには、必ず定款を作成する必要があります。当該定款は設立前に公証人から認証を受けて、当該認証を受けた定款を会社の設立登記に添付する必要があります。
この定款には、商号や本店の所在地、目的や株式の取り扱いなど、会社運営に必要な基本事項が定められており、会社の憲法といわれています。会社設立後は、当該定款を変更するには、株主総会における特別決議が必要です。ではこの定款の記載事項について、条文を参照します。
(定款の記載又は記録事項)
第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
第二十九条 第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
いかがでしょうか?
上記27条は定款の絶対的記載事項とされ、28条及び29条は任意的記載事項とされています。
目的ってどうやって決める?
会社の定款に記載される「目的」は、いわゆる会社の事業内容であり、今後この会社がどういった事情で運営していくかという指針となります。この目的は、登記簿として第三者から見られるものであり、内容が不明瞭なものはだめですし、もちろん違法なものは定款目的に記載することができません。
また個人事業であれば、その個人が不動産業をしようが、飲食店をしようが、IT関連の事業を立ち上げようが自由ですが、法人の場合は、一応この会社目的に記載されたことだけ活動できるという縛りがあります。ただこの縛りを破ったからといって罰則はないということと、通常目的の最後に「前各号に付帯、関連する一切の事業」と記載することで目的を広くとらえることができます。
弊所で定款を作成する場合は、以下のことに注意して目的を作成します。
①メインの事業について記載すること
起業されるメインとなる事業については、必ず記載しましょう。弊所の過去の経験で、ある事業で金融機関から融資を受けようとした際に、金融機関から定款目的に入っていないことを理由に「目的にその事業を追加してくれ」と要求されるケースがありました。追加自体は費用をかけて株主の承認を取れれば可能ですが、最初にしっかり入れておくに越したことはありません。
②将来予定している事業について記載すること
今現在行っている(行おうとしている)事業だけでなく、将来的に行いたい事業も事前に入れておきましょう。会社定款目的に入っているから絶対にその事業をやらないといけないということではありません。将来追加するには費用も手間もかかるため、入れておいた方がよいかと思います。
③許認可が必要な事業は文言に注意して記載すること
行政上の許認可が必要な事業が多くあります。例えば、建設業とか、古物商、運送業や旅行業など、事業を行うために行政の許認可を受ける必要があるものが多くあります。こういった許認可事業は、定款の目的に当該事業が入っていないと不許可事由となってしまう可能性があります。文言の記載も事前に当該行政官庁に確認しておいた方が安全です。
「会社目的ってどれくらい入れれるの?」
という質問を受けることがあります。目的の個数について、会社法上の制限はありません。但し、当該目的は登記簿に記載されるため、取引先や金融機関も簡単に確認することができます。この時、会社の目的が50個も100個もあると、「この会社が何をやっている会社なのか分からない」と不信感をもたらす原因となりかねません。弊所にご依頼いただく会社様は大体平均して5~8個くらいの目的を掲げられる会社様が多いように感じます。
公告方法は、官報?電子公告?
会社は、組織再編や、解散、債権者保護手続き、決算公告など、重要なことを公告することがあり、この公告方法は、定款の記載事項となっています。公告方法には以下の3つの方法があります。
①官報公告
②日刊新聞紙に掲載する方法
③電子公告
上記の内ほとんどの会社が官報公告を選びます。官報は国の機関紙です。
日刊新聞紙は使い勝手や、費用の問題から選ばれる人は少ないです。
たまに電子公告を検討したいという方がいらっしゃいますので、電子公告のメリット、デメリットについて簡単に説明します。
ちなみに電子公告とは、会社のホームページなどのインターネット上に情報を公開することをいいます。
【電子公告のメリット】
・自社のホームページであれば掲載費用がかからないし、掲載も素早く行える。
【電子公告のデメリット】
・官報公告等であれば、通常決算公告として貸借対照表や損益計算書の要旨だけ載せればよいが、電子公告の場合は全部を公開する必要がある。また5年間掲載する必要があり、取引先、ライバル等に会社の業績を簡単に知られてしまうことになる。
・減資や合併を行うときに、官報公告に加えて、通常は各債権者への個別催告も必要となる。電子公告を選択することで、この各債権者への個別催告に代えて電子公告をすることにより、個別催告を省略できる。
役員の任期は2年?10年?
役員の任期は定款の記載事項です。株式会社の取締役には、選任されたらずっと取締役で安泰というわけではなく、任期があります。任期がくると取締役は任期満了退任となりますが、当該定時株主総会にて再任されることで任期を更新することもできます。この任期ごとに役員の構成員が変わる、変わらないに関わらず、役員変更(重任)登記を申請する必要があります。登記申請はもちろんコストがかかり、司法書士に頼むと大体4万円ほど費用がかかることが多いです。
この任期は会社法上の原則は2年となりますが、非公開会社(株式のすべてに譲渡制限がついている会社の場合)であれば最長10年まで伸ばすことができます。任期が短いこと、長いことのそれぞれメリットデメリットがあるため、下記に参照します。
【任期が短いメリット・デメリット】
役員の見直しを定期的にできます。もし素行のよくない役員がいた場合に、任期が長いと本人から辞任されない限り基本的には役員に居座り続けます(解任は可能)。短ければ、その見直しのタイミングに選任しなければいいだけなので、早く排除することができます。逆に見直しの機会(改選の機会)が頻繁にくるため、その際の登記コストはかさみやすいです。
【任期が長いメリット・デメリット】
任期が長いとその間、改選をする必要がない=登記をする必要がないため、登記コストは安くなります。もちろんその間に新任の取締役を株主総会で選任したり、途中の事情変更で辞任をすることは可能です。デメリットは、長いことで役員を見直す機会が減ることです。これは、任期満了前に正当な理由なく役員の解任を行った場合の、当該役員の会社に対する損害賠償額に影響を及ぼす可能性があります。損害賠償対象となるのは、任期満了までの期間に得られたであろう役員報酬であるため、任期が長いほど、この賠償額が大きくなる可能性があります。
夫々メリットデメリットがありますが、少数の例えば一人会社で役員の入れ替えもあまり想定していなければとりあえず10年で問題ないと思います。新しく役員が増えるタイミングで任期の見直しを行えばいいのです。
資本金と株式発行数の決め方
会社の資本金を決める必要があり、会社設立の際は、通常発起人と呼ばれる出資者が決めた金額を会社の資本金として登記するようになります。この金額も決まりはなく、例えば1円の資本金も可能です。決め方としては、まずこの資本金は登記簿の記載事項であり取引先なども簡単に見ることができます。資本金が「1円」の会社より「100万円」の会社のほうが、会社としての信用度って高く見えますよね。また、あまりに低すぎると会社の実態が無い(薄い)のではないかと疑われ、金融機関から口座開設を断られる原因となることがあります。弊所で設立する会社は。50万、100万といった区切りで資本金を設定するかたが多いように感じます。
また株式発行数の決め方も考える必要があります。例えば100万円の資本金の会社を設立して、通常は、「1株10,000円×100株」の発行として登記することがあります。これは通常の起業であれば問題ないかと思います。ただ、将来的にVC等の投資家から出資を受けるいわゆる「スタートアップ」を目指されている場合は注意が必要です。外部出資に頼る場合は、基本的に株式を売って資金を調達していきます。その投資交渉において1株10,000円だと細かい交渉を進めるのが難しくなり、前提として株式分割が必要になったりしてしまいます。最初から例えば1株1円×1,000,000株にしておくことで、投資家との細かい交渉をすることが可能です。
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