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相続が起きたら何から始める?最初にやるべき2つのことを司法書士が解説

相続が発生したら、最初に「誰が相続人なのか(相続人調査)」と「どんな財産・借金があるのか(財産目録の作成)」を確認することから始めます。この2つで相続の全体像が見えると、ご自身で進められる部分と、専門家に頼むべき部分が判断しやすくなります。さらに、司法書士・税理士・弁護士のうち、どの専門家に相談すればよいかも見えてきます。そのため、個別の手続きにいきなり手をつけるより、先に全体をつかむことが結果的に近道になります。

この記事で分かること

  • 相続が発生した直後に、最初に取り組むべき2つのこと
  • 相続人調査と財産目録づくりの具体的な進め方
  • 自分で進めるときに陥りやすい勘違い
  • 専門家への相談を検討したほうがよいケース

1. なぜ「相続人調査」と「財産目録」から始めるのですか?

相続はいつ始まりますか?

相続は、人が亡くなった時点で自動的に始まります(民法882条)。つまり、何かの届出をしたときに始まるのではありません。亡くなった方(「被相続人」といいます)の財産や借金は、その時点で相続人に引き継がれる状態になります。

誰が相続人になりますか?

誰が相続人になるかは、民法で順位が決められています(民法887条・889条・890条)。

  • 配偶者:常に相続人になります
  • 第1順位:子(子が先に亡くなっている場合は孫など)
  • 第2順位:父母などの直系尊属(「直系尊属」とは、父母・祖父母のように自分より前の世代の直系の親族のことです)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子である甥・姪)

ただし、実際に誰が相続人になるかは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえて確認しないと確定できません。なぜなら、家族が把握していない子や、前の結婚で生まれた子がいる可能性もあるためです。

なぜ財産も最初に確認するのですか?

一方、財産についても、内容が分からなければ「相続するか、しないか」「どう分けるか」を判断できません。特に注意したいのは、借金などのマイナスの財産も相続の対象になることです。また、相続するかどうかを考える期間(「熟慮期間」といいます)は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内とされています(民法915条1項)。

全体像が分かると、何が変わりますか?

遺産分割(相続人どうしで遺産の分け方を決めること)、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の解約、相続放棄、税金の申告。どの手続きも「誰が」「何を」相続するのかが前提になります。だからこそ、最初に相続人調査と財産目録の作成に取り組み、相続の概要をつかむことが大切です。さらに、概要が分かれば、登記は司法書士、税金は税理士、争いがあれば弁護士というように、どの士業に頼むべきかも見えてきます。

2. 実際には、どのようなケースで困ることが多いですか?

事例:疎遠だった叔父が亡くなり、相続人になったケース

  • 状況:長い間ほとんど交流のなかった叔父が亡くなり、ご相談者がその相続人になりました。
  • 問題点:疎遠だったため、相続人が誰なのかも、叔父にどのような財産があるのかも分かりませんでした。借金があるかどうかも見当がつかない状態でした。
  • 対応:戸籍を集めて相続人調査を行い、あわせて負債を含む相続財産の調査を行いました。そのうえで、判明した他の相続人と連絡を取り、手続きを進めました。
  • 期間・費用の目安:手続き全体で半年ほどかかりました。費用は、相続人の人数や財産の内容によって異なります。

このケースのように「誰が相続人か」「何があるか」の両方が分からない状態から始まる場合、相続人調査と財産調査が手続き全体の土台になります。

3. 具体的には、どのような順番で進めればよいですか?

STEP1 戸籍を集めて相続人を確定する

  • 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍を含みます)を、市区町村役場で取得します。「改製原戸籍」とは、法改正で戸籍の様式が作り替えられる前の古い戸籍のことです。
  • 相続人全員の現在の戸籍も取得します。
  • 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合は、亡くなった方の父母の戸籍もさかのぼって必要になるため、集める通数が多くなります。
  • 集めた戸籍をもとに相続関係を図にまとめておくと、その後の手続きで役立ちます。法務局の「法定相続情報証明制度」(相続関係の一覧図を法務局が証明してくれる制度)を使うと、金融機関などに戸籍の束を何度も出す手間を減らせます。

STEP2 財産と負債を洗い出し、財産目録を作る

財産目録とは、プラスの財産とマイナスの財産を一覧にした表のことです。主な手がかりは次のとおりです。

  • 不動産:固定資産税の納税通知書、市区町村の名寄帳(その人が所有する不動産の一覧)
  • 預貯金:通帳やキャッシュカード、金融機関への残高証明書の請求
  • 株式・投資信託:証券会社から届いている郵便物
  • 借金などの負債:契約書や督促状、信用情報機関への開示請求

特に、ご自宅に届く郵便物や通帳の取引履歴が、財産や負債を見つける大きな手がかりになります。

STEP3 全体像をもとに、方針と相談先を決める

  • 借金が多い可能性がある:相続放棄(家庭裁判所に申し立てて、一切の財産を相続しないこと)などを検討します。原則3か月の熟慮期間に注意が必要です。
  • 不動産がある:相続登記(不動産の名義変更)が必要です。2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が求められます(不動産登記法76条の2)。
  • 相続税がかかるかもしれない:税理士と連携して対応します。
  • 相続人の間で意見が対立している:弁護士と連携して対応します。

4. 注意点・よくある勘違いはありますか?

「専門家に頼めば、財産はすべて見つかる」は本当?

いいえ。財産の調査は、通帳や郵便物、役所や金融機関への照会など、手がかりをもとに進めます。そのため、手がかりがまったくない財産まで網羅的に調べ尽くせるわけではありません。したがって、心当たりのある金融機関や郵便物などがあれば、できるだけ共有していただくことが調査の精度につながります。

「司法書士に頼めば、他の相続人との交渉も任せられる」は本当?

いいえ。司法書士は、ご本人に代わって他の相続人と交渉することはできません。弁護士でない者が報酬を得て交渉などの法律事務を行うことは「非弁行為」として禁止されているためです(弁護士法72条)。交渉が必要な場面では、弁護士と連携して対応します。

「財産の調査が終わるまでは、何もしなくてよい」は本当?

注意が必要です。相続放棄などを検討する熟慮期間は、原則3か月です(民法915条1項)。また、調査に時間がかかりそうな場合は、家庭裁判所に期間の延長(伸長)を申し立てる方法もあります。いずれにしても、早めに動き始めることが大切です。

5. どのような場合に、司法書士に相談したほうがよいですか?

  • 何から始めればよいか分からないとき
    相続の手続きは種類が多く、順番を誤ると期限に間に合わないこともあります。そこで司法書士に相談すれば、相続の概要を整理し、何をどの順で進めるか、どの専門家が必要かを一緒に見極められます。
  • 平日の日中に、仕事などで動けないとき
    役所での戸籍請求や金融機関・法務局での手続きは、平日の日中に行うものが中心です。その点、相続人調査や財産目録の作成は司法書士に依頼できるため、ご自身の負担を減らせます。
  • 疎遠な親族の相続で、相続人も財産も分からないとき
    事例のように、相続人の確定と負債を含む財産調査から始める必要があります。そのため、古い戸籍の読み解きや調査の進め方に慣れた専門家に任せることで、手続きを進めやすくなります。
  • 税金や相続人間の調整も関わりそうなとき
    司法書士の業務範囲外となる税務や交渉は、提携する税理士・弁護士と連携して対応します。窓口を一つにまとめたワンストップでのご相談が可能です。

6. まとめ

相続が発生したら、最初に取り組むべきは相続人調査と財産目録の作成です。この2つで相続の全体像が分かると、その後の手続きの順番や、どの専門家に相談すべきかが見えてきます。また、借金などの負債も相続の対象となり、相続放棄には期限があるため、早めに動き始めることが大切です。もし迷ったときは、まず概要を整理するところから専門家に相談してみてください。

重要ポイント

  1. 最初の一歩は「誰が相続人か」「何を相続するか」の確認
  2. 負債も相続の対象。熟慮期間は原則3か月
  3. 司法書士は交渉ができないため、必要に応じて税理士・弁護士と連携

よくある質問

Q1. 相続人調査は自分でもできますか?

A. はい、ご自身で戸籍を集めて行うことも可能です。ただし、相続人が兄弟姉妹や甥・姪になる場合などは、集める戸籍の通数が多く、古い戸籍の読み解きも必要になります。時間や手間が気になる場合は、司法書士に依頼する方法もあります。

Q2. 財産調査を依頼すれば、すべての財産が見つかりますか?

A. 財産調査は通帳や郵便物などの手がかりをもとに行うため、すべてを網羅できるとは限りません。心当たりの金融機関や書類があれば、できるだけ共有していただくことが大切です。

Q3. 他の相続人との話し合いを、司法書士に任せることはできますか?

A. 司法書士は、ご本人に代わって他の相続人と交渉することはできません。交渉が必要な場合は、弁護士と連携して対応します。

Q4. 亡くなった人に借金があるかもしれない場合は、どうすればよいですか?

A. まずは信用情報などの照会により負債を含めた財産調査を行い、借金の有無と金額を確認します。そのうえで、借金が多い場合は相続放棄を検討しますが、原則として相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。

※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。

この記事の監修者

柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士

  • 岡山県司法書士会所属 第861号
  • 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
  • 得意分野:相続・遺言・不動産取引

香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。

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