役員変更登記を何年も放置している場合は、今からでも役員を選び直し、登記を申請しましょう。会社は、定款で定めた役員の任期(会社法の原則は2年、定款で最長10年まで)ごとに、メンバーが変わらなくても役員変更登記をする必要があります。登記の期限は、変更が生じてから2週間以内です(会社法915条1項)。期限を過ぎると過料(行政上の金銭的な制裁)の対象になる可能性がありますが、役員変更登記を放置し続けるよりも早めに整えることが大切です。
役員の任期と登記はどういう関係?
株式会社の取締役や監査役には、任期(その役職に就いていられる期間)があります。
- 取締役:原則は2年(会社法332条1項)
- 監査役:原則は4年(会社法336条1項)
- 株式の譲渡に制限がある会社:定款で最長10年まで延ばせる
定款(会社の基本ルールを定めたもの)によって、任期は1年から10年まで会社ごとに異なります。正確には「選任後○年以内に終わる事業年度のうち、最後のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と決まっており、決算期と株主総会の時期も関係します。
任期が来ると、その役員はいったん退任します。同じ人が引き続き役員を続ける場合も、株主総会で選び直して「重任(じゅうにん:任期満了と同時に同じ人が再び就任すること)」の登記をします。
再任の場合も登記が必要なことは、法務省の案内でも説明されています。
登記の期限と過料は?
登記は、変更が生じてから2週間以内に本店の所在地で申請する必要があります(会社法915条1項)。役員変更登記を放置すると、代表者に100万円以下の過料が科される可能性があります(会社法976条1号)。
さらに、役員変更登記などを放置したまま最後の登記から12年が経つと「休眠会社」として扱われ、法務局が解散の登記をする「みなし解散」の対象になります(会社法472条)。
実際にはどんな相談がある?
当事務所に寄せられたご相談から、2つご紹介します(個人が特定されないよう、内容を一部変えています)。
ケース1:定款をなくして任期が分からないときは?
「会社の定款を紛失してしまい、役員の任期が分からない」というご相談でした。
当事務所では、原始定款(会社設立時に作った定款)や過去の議事録、過去の登記簿などを調査しました。そのうえで、株主総会の承認を得て定款を再製(作り直すこと)しました。あわせて、定款の任期どおりの役員変更登記も当事務所で対応しました。
ケース2:過去の登記を忘れていたら、今からでも対応が必要?
「過去の役員変更登記を忘れていた。いまさらだが対応が必要か」というご相談でした。
当事務所では、定款などの資料や過去の決算日を確認しました。そのうえで、選任懈怠(任期が来たのに後任の役員を選んでいない状態)ではありますが、改めて選任決議を行い、登記を申請しました。
このケースでは過料が発生しますが、そのことを事前にご説明していたため、経営者の方もあわてることなく、予定どおりに手続きが進みました。
放置していた役員変更登記はどんな流れで進める?
役員変更登記を何年も放置している場合は、次の順で進めます。
- 登記簿を確認する:登記事項証明書(登記の内容を証明する書類)を取り、今の役員と就任日を確かめます。
- 定款を確認する:役員の任期と事業年度(決算期)を確かめます。定款が見当たらない場合は、過去の資料をもとに再製を検討します。
- 任期が切れた時期を調べる:過去の決算日と定時株主総会の時期から、いつ任期が満了したのかを計算します。
- 株主総会で役員を選ぶ:同じ人が続ける場合も、改めて選任の決議をします。取締役会がある会社では、代表取締役も選びます。
- 書類をそろえて申請する:議事録や就任承諾書(役員を引き受けるという書面)などを作り、法務局へ申請します。登録免許税(登記にかかる税金)は、資本金1億円以下の会社で1万円、それを超える会社で3万円です。
- 過料の通知に備える:登記のあと、裁判所から過料の通知が届くことがあります。
何度も任期が来ているときは?
途中で何度も任期が来ている場合、過去のどの時点で退任・就任したことになるのかの整理が必要です。会社の状況によって書類の組み立てが変わるため、この部分がいちばん時間のかかるところです。
どんな点に注意すればいい?
役員が変わらなければ、登記はいらない?
いいえ。これはよくある勘違いです。役員の顔ぶれが変わらなくても、任期ごとに重任の登記をする必要があります。代表者ひとりだけの会社でも同じです。
代表者の住所が変わったら、何か必要?
はい。代表者の住所は登記事項(登記簿に載せると法律で定められた項目)です。引っ越しなどで住所が変わったときは、住所の変更登記が必要です。役員変更と同じく、2週間以内の申請が求められます。
役員変更登記を放置して任期が切れたままだと、どうなる?
任期が切れても、後任が選ばれるまでは、それまでの役員が役員としての権利義務を引き継ぎます(会社法346条1項)。ただし、これは「選任懈怠」という状態です。登記を怠ったこととあわせて、過料の対象になる可能性があります(会社法976条22号)。
過料をおそれて役員変更登記を放置してもいい?
役員変更登記を放置しても、登記を怠っている状態は続きます。最後の登記から12年が経つと、みなし解散の対象にもなります。過料が発生する可能性も含めて事前に把握し、早めに手続きを進めるほうが安心です。
専門家に相談したほうがいいのはどんなとき?
次のような場合は、早めに司法書士(登記の専門家)への相談をおすすめします。
- 定款が見当たらず、役員の任期が分からない
- 何年も登記しておらず、いつ任期が切れたのか整理できない
- 過去の議事録や決算の資料がそろっていない
- 役員の変更とあわせて、代表者の住所や本店なども登記していない
- 法務局からみなし解散の通知が届いている
- 株主の間で意見が対立している、税金面の不安がある
揉め事や税金が関わる場合は、税理士・弁護士と連携して対応します。
司法書士法人SORA(岡山市)では、登記簿や定款の調査から、定款の再製、役員変更登記の申請までをお手伝いしています。ご相談の際は、登記事項証明書と、お手元にある定款や議事録をご用意ください。
結局、何をすればいい?
- 役員には任期があり、顔ぶれが変わらなくても任期ごとに重任の登記が必要
- 登記の期限は、変更が生じてから2週間以内
- 代表者の住所が変わったときも、変更登記が必要
- 何年も登記していなくても、定款や過去の資料を確認して、今から選任と登記をやり直せる
- 過料の可能性はあるが、役員変更登記を放置するとみなし解散の対象にもなりうる
定款がない場合や、何度も任期が来ている場合でも、資料をよく調べれば整理できることが多くあります。岡山で会社の登記にお困りの際は、お気軽にご相談ください。
よくある質問は?
Q1. 定款がどこにも見当たりません。どうすればいいですか?
原始定款や過去の議事録、過去の登記簿などを手がかりに、定款の内容を調べます。そのうえで、株主総会の承認を得て定款を再製する方法があります。当事務所でも、この方法で定款を再製し、任期どおりの役員変更登記まで対応した例があります。
Q2. うちは有限会社ですが、役員変更登記は必要ですか?
会社法ができる前からある有限会社(特例有限会社)には、取締役の任期の定めがありません。そのため、任期ごとの重任登記は通常不要です。ただし、定款で任期を定めている場合はそれに従います。また、代表者の住所が変わったときなどは、変更登記が必要です。
Q3. 過料はだれが、いくら支払うのですか?
過料は、登記を怠った代表者個人に科されます。法律上の上限は100万円で、実際の金額は裁判所が個別に決めます。過料が発生する可能性も含めて、手続きの前に専門家に確認しておくと安心です。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
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