遠方や海外に住んでいる相続人がいることもあります。その場合も、相続人全員で遺産分割の話し合いをする必要があります。
ただし、全員が一か所に集まる必要はありません。やり取りは、電話やメール、郵送で行えます。そして、全員の同意がそろえば話し合いはまとまります。
また、司法書士が間に入ることもできます。そうすれば、煩雑な相続手続きや協議書のやり取りを、手間を抑えて進められます。

遠方に相続人がいるとき、結局どうすればいい?
まとめると、ポイントは次の3つです。
- 遠方に住んでいる相続人も、原則として遺産分割協議への参加が必要です
- 全員で集まる必要はなく、同意があれば郵送などで進めることができます
- 海外に住んでいる相続人がいる場合は、状況に応じてさまざまな書類が必要です。そのため、司法書士への依頼をおすすめします
そもそも遺産分割協議とはどんなもの?
遺産分割協議とは、亡くなった方の財産(遺産)の分け方を決める話し合いです。具体的には、誰がどれだけ受け継ぐかを相続人全員で決めます。
この話し合いは、相続人が一人でも欠けていると無効になってしまいます。つまり、「遠くに住んでいるから」という理由で外すことはできません。ほとんど連絡を取っていない方の場合も同じです。
全員が集まらないと話し合いはできない?
集まる必要はありません。話し合いの方法は、特に決められていません。そのため、電話やメール、手紙などでやり取りをしても構いません。全員が同じ内容に同意すれば、話し合いは成立します。
合意した内容は「遺産分割協議書」(話し合いの結果をまとめた書面)にします。一般的には、相続人全員が署名し、実印(市区町村に登録した印鑑)を押します。さらに、印鑑証明書を添えます。
遠方の相続人がいる場合は、主に2つの方法があります。1つ目は、1通の協議書を郵送で順番に回し、署名・押印してもらう方法です。2つ目は、同じ内容の書面を相続人ごとに用意し、それぞれ署名・押印してもらう方法です。
なお、遺言書がある場合もあります。その場合は、内容によっては遺産分割協議をしなくてもよいこともあります。
実際にはどんな相談がある?
当事務所に寄せられたご相談から、2つの例をご紹介します。なお、個人が特定されないよう、内容を一部変えています。
相続人が海外に住んでいて、話し合いが難しいときは?
相続人のお一人が、海外にお住まいでした。そのため、どのように協議を進めればよいかわからない、というご相談です。
当事務所では、現地の相続人の方とメールでやり取りをして、内容を確認しました。そのうえで、現地の領事館に出向いていただき、手続きを進めることができました。
相続人が県外のあちこちに住んでいて、郵送が大変なときは?
相続人の方が、岡山県外に複数散らばっていたケースです。そのため、書類の郵送ややり取りの手間が大きな負担になっていました。
そこで、司法書士が間に入り、金融機関の書類をまとめるなどしました。その結果、相続人の皆さまの手間を抑えながら、効率よく手続きを進めることができました。
遠方の相続人がいる場合、手続きはどんな流れで進む?
遠方の相続人がいる場合の、一般的な流れは次のとおりです。
- 相続人を確定する:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めます。戸籍とは、家族関係を記録した公的な書類です。そのうえで、相続人が誰かを確定します。
- 財産を調べる:不動産、預貯金、株式など、どんな財産があるかを調べます。
- 分け方を話し合う:電話やメールなどで、各相続人の意向を確認します。そのうえで、内容をまとめます。
- 協議書に署名・押印してもらう:遺産分割協議書を郵送します。そして、署名・実印の押印と印鑑証明書の返送をお願いします。海外にお住まいの方は、現地の日本大使館・領事館で手続きをしていただきます。そこで、印鑑証明書の代わりとなる書類を取得します。
- 名義を変更する:不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約・名義変更を行います。
また、金融機関が複数ある場合は、「法定相続情報証明制度」が便利です。これは、法務局が戸籍の束の内容を1枚の一覧図にして証明してくれる制度です。この制度を使うと、戸籍一式を何度も出し直す手間を減らせます。
遠方の相続人がいるとき、どんな点に気をつければいい?
全員に集まってもらわないといけない?
よくある勘違いですが、遠方の相続人に集まってもらう必要はありません。同意さえあれば、郵送で進めることができます。むしろ、無理に日程を合わせようとして、手続きが止まってしまうほうが心配です。
遠方の相続人との郵送のやり取りで気をつけることは?
郵送は1往復に日数がかかり、書類に不備があると送り直しになります。そのため、一度で済む工夫が大切です。たとえば、記入例や返信用封筒を同封する、記録が残る方法で送るなどです。
印鑑証明書は、相続登記では有効期限が求められません。一方、金融機関では期限を求められることがあります。たとえば、「発行から3か月以内」「6か月以内」などです。そのため、提出先ごとの条件を先に確認しておくと安心です。
海外に住む相続人の書類はどうする?
海外にお住まいの方は、日本の印鑑証明書や住民票を取得できないことが多いです。そこで、現地の日本大使館・領事館で、代わりの証明書を取得するのが一般的です。具体的には、「署名証明(サイン証明)」と「在留証明」です。署名証明は本人の署名であることの証明で、在留証明は住所の証明です(外務省:在外公館における証明)。
ただし、国や状況、日本国籍かどうかによって必要な書類が変わります。そのため、司法書士への依頼をおすすめします。
期限はある?
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。具体的には、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。もし正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になることがあります。過料とは、行政上のペナルティとしてのお金です。
また、相続放棄(財産も借金も一切受け継がないこと)を選ぶ場合もあります。その場合は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に手続きが必要です。手続きは家庭裁判所で行います。特に、遠方の相続人がいると連絡に時間がかかるため、早めに動き出すことが大切です。
なお、相続税などの税金に関わることは、税理士と連携して対応します。
相続人が遠方にいるとき、専門家へ相談したほうがいいのは?
次のような場合は、早めに司法書士へご相談いただくことをおすすめします。
- 相続人の中に、海外に住んでいる方がいる
- 相続人が多く、いくつもの県に散らばっている
- 取引のある金融機関が複数あり、書類の準備が大変
- 相続財産に不動産が含まれていて、相続登記が必要
- 平日に役所や金融機関へ行く時間がなかなか取れない
司法書士が間に入れば、手続きをまとめて進めることができます。たとえば、戸籍の収集から協議書の作成・やり取り、相続登記までです。
なお、相続人同士で意見がまとまらない場合は、弁護士と連携して対応します。また、相続税の申告が必要な場合は、税理士と連携して対応します。
遠方の相続人がいる相続、まず何から始めればいい?
遠方に住んでいる相続人がいても、遺産分割協議への参加は原則として必要です。ただし、全員で集まる必要はありません。同意さえとれていれば、郵送などで手続きを進めることができます。
とはいえ、海外にお住まいの相続人がいる場合もあります。また、相続人が各地に散らばっている場合もあるでしょう。こうした場合は、書類のやり取りだけでも大きな負担になりがちです。そのため、まずは相続人と財産の全体像を整理し、早めに動き出すことが大切です。
司法書士法人SORAでは、相続手続きをサポートしています。岡山にお住まいの方はもちろん、遠方の相続人とのやり取りも含めて対応します。お一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
よくある質問は?
Q1. 遠方の相続人と一度も顔を合わせずに決めても、協議は有効ですか?
はい、直接会っていなくても有効です。ただし、相続人全員が同じ内容に同意している必要があります。そのうえで、遺産分割協議書に署名・押印します。つまり、大切なのは「全員が合意していること」です。
Q2. 海外に住む相続人が日本の印鑑証明書を取れない場合は、どうしますか?
印鑑証明書の代わりに、「署名証明(サイン証明)」を使う方法が一般的です。署名証明は、現地の日本大使館・領事館で取得していただけます。ただし、国や国籍によって必要な書類が異なるため、事前に司法書士へご相談ください。
Q3. 遠方の相続人と連絡が取れない場合は、どうすればいいですか?
まずは、戸籍の附票などで現在の住所を調べます。戸籍の附票とは、住所の移り変わりが記録された書類です。そのうえで、手紙で連絡を取るのが一般的です。それでも行方がわからない場合は、家庭裁判所に申し立てる方法があります。具体的には、「不在者財産管理人」の選任を求めます。不在者財産管理人とは、行方不明の方に代わって財産を管理する人です。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
司法書士法人SORA|〒700-0977 岡山市北区問屋町11-106 TOIYACHO BOOTH BLD 306号|TEL 086-242-6866
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