遺産分割協議書は誰が作るのか。結論として、相続人ご自身で作成しても法律上有効です。誰が作るべきかを定めた法律上の決まりはありません。そのため、ご家族で作られることもあれば、司法書士などの専門家が作成することもあります。
ただし、不動産の相続登記に使う場合は注意が必要です。相続登記とは、亡くなった方から相続人へ不動産の名義を変える手続きです。この手続きに使う協議書は、書き方に不備があると法務局で使えないことがあります。そのため、不動産が含まれる場合は司法書士が作成するケースが多くなっています。

そもそも遺産分割協議書とは何?
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことです。遺産とは、亡くなった方(被相続人)が残した財産を指します。また、民法では、相続人は協議で遺産を分けられると定められています。ただし、遺言で禁止されている場合などは除きます。
その話し合いの結果を書面にしたものが「遺産分割協議書」です。一般的には、相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を添えます。なお、実印とは市区町村に登録した印鑑のことです。
遺産分割協議書は誰が作る?資格は必要?
遺産分割協議書を誰が作るかについて、資格の制限はありません。相続人ご自身がパソコンや手書きで作成しても有効です。専門家に頼む場合は、目的に応じて次のような依頼先があります。
- 不動産の相続登記に使う場合:司法書士
- 相続税の申告が必要な場合:税理士
- 相続人どうしで意見が対立している場合:弁護士
このほか、行政書士など他の士業が作成するケースもあります。
協議書はどんな場面で使うの?
主に次の手続きで提出を求められます。
- 不動産の相続登記(法務局)
- 預貯金の解約・名義変更(金融機関)
- 株式などの名義変更(証券会社など)
- 相続税の申告(税務署)
実際にはどんな相談があるの?
当事務所に寄せられたご相談から、2つのケースをご紹介します(内容は一部変えています)。
ケース1:自分で作った協議書が登記に使えなかったら、どうする?
ご相続人が、ご自身で作成した遺産分割協議書を持ってこられました。ところが、不動産の書き方があいまいで、どの土地・建物なのかを特定できませんでした。そのため、そのままでは相続登記に使えない状態でした。
そこで、当事務所で、登記に使える形に協議書を作り直しました。
不動産は、登記簿(登記事項証明書)に書かれているとおりに記載するのが基本です。土地なら「所在・地番・地目・地積」、建物なら「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」などです。特に注意したいのが住所です。普段使っている住所(住居表示)と登記上の地番は、一致しないことが多くあります。
ケース2:預金の手続きが終わった後でも、協議書は作るべき?
預金の解約などの手続きは、すでに済んでいました。しかし、遺産分割協議書は作成していないという方からのご相談でした。
当事務所では、次の2つの理由から協議書の作成を行いました。
- 後になって「そんな分け方には同意していない」といった争いが起きるのを防ぐため
- 税務上、その財産を相続によって取得したことを書面で示すため
つまり、手続きが終わっていても、合意の内容を書面に残しておく意味はあります。
作成から手続き完了までの流れはどうなる?
一般的な流れは次のとおりです。
- 相続人を確定する:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めます。そして、相続人が誰かを確認します。
- 相続財産を調べる:不動産は、登記事項証明書や固定資産税の評価証明書で確認します。また、名寄帳(その市町村で所有している不動産の一覧)も手がかりになります。預貯金は、通帳や残高証明書で確認します。
- 相続人全員で話し合う:誰がどの財産を取得するかを決めます。
- 協議書を作成する:決まった内容を、財産が特定できるように正確に書面にします。
- 全員が署名・実印で押印する:あわせて各相続人の印鑑証明書を用意します。
- 各種手続きを行う:法務局への相続登記の申請、金融機関での預金の手続きなどを行います。
遺産分割協議書を自分で作るとき、どこに注意すればいい?
相続人が一人でも欠けていたらどうなる?
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。一人でも参加していない協議は、無効とされます。そのため、戸籍で相続人を正確に確定することが出発点になります。
不動産はどう書けばいい?
ケース1のとおり、住所だけの記載では登記に使えないことがあります。「自宅」といった書き方も同様です。そこで、登記事項証明書を取り寄せ、記載どおりに書き写しましょう。
一部の財産だけの協議書でも有効?
すべての財産を一通の協議書に載せるのが望ましいです。とはいえ、例えば不動産についてだけ決めた協議書も有効です。その場合は、後から別の財産が見つかったときの扱いも決めておきましょう。あらかじめ協議書に書いておくと安心です。
未成年者や認知症の方が相続人にいる場合は?
未成年者と親が共に相続人になる場合があります。このときは、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要になることがあります。特別代理人とは、子どもの代わりに協議に参加する人です。また、判断能力が十分でない方がいることもあります。その場合は、成年後見人などの関与が必要になることがあります。
印鑑証明書に期限はある?
相続登記では、印鑑証明書に有効期限は設けられていないとされています。一方、金融機関では期限を求められることが多くあります。例えば、「発行から3か月以内」や「6か月以内」などです。そのため、提出先ごとに確認しましょう。
相続登記はいつまでにすればいい?
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。具体的には、不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります(不動産登記法76条の2、164条)。過料とは、行政上のペナルティのことです。なお、協議がまとまらない場合の「相続人申告登記」という制度もあります。
専門家に相談したほうがいいのはどんなとき?
次のような場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
- 相続財産に不動産が含まれていて、相続登記まで進めたい
- 相続人の人数が多い、疎遠な方や連絡先がわからない方がいる
- 相続人に未成年者や、判断能力に不安のある方がいる
- 相続の手続きをしないうちに、次の相続が起きている(数次相続)
- 会社の株式など、評価や手続きが複雑な財産がある
- ご自身で作った協議書が、そのまま使えるか不安
なお、相続税の申告が必要な場合もあります。また、相続人どうしの話し合いがまとまらないこともあります。これらについては、税理士・弁護士と連携して対応します。
結局、遺産分割協議書は誰が作るのがいいの?
まとめると、遺産分割協議書は誰が作るかに決まりはありません。専門家でなくても作成でき、ご自身で作ったものも有効です。ただし、相続人全員の合意や財産の正確な特定など、押さえるべきポイントがあります。
特に不動産が含まれる場合は、記載の不備で登記に使えず、作り直しになることもあります。そのため、司法書士に作成を依頼するのも一つの方法です。また、手続きが終わった後でも、将来の争いを防ぐために協議書を残しておく意味はあります。
岡山で遺産分割協議書を誰が作るか迷ったときは、司法書士法人SORAへお気軽にご相談ください。
よくある質問は?
Q1. 手書きの協議書でも使えますか?
はい、手書きでもパソコンで作成したものでも有効です。署名は各相続人の自筆にしておくと、本人が合意したことを示しやすくなります。
Q2. 相続人が遠方に住んでいる場合はどうすればいいですか?
全員が集まらなくても、協議書を郵送で回して順に署名・押印する方法があります。同じ内容の協議書を人数分作り、各自が署名・押印する方法(分割して作成する方法)もあります。
Q3. 遺言書がある場合も、遺産分割協議書は必要ですか?
遺言書がある場合は、原則として遺言の内容に沿って手続きを進めるため、協議書は不要なことが多いです。ただし、遺言に書かれていない財産がある場合や、相続人全員が遺言と異なる分け方に合意した場合などは、協議書を作成することがあります。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
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