数次相続(すうじそうぞく)とは、亡くなった方の相続手続きをしないうちに、相続人の一人が亡くなり、次の相続が重なって起きることです。
手続きを何年も放っておくと相続が二重、三重と重なり、話し合いに加わる相続人がどんどん増えていきます。
また、相続人が亡くなっても、その方の分の話が消えるわけではありません。その方のお子さんなど「次の相続人」全員のハンコがないと、手続きは進められません。
だからこそ、次の相続が重なる前に、早めに手続きを済ませておくことをおすすめします。

数次相続は、どんな状態のこと?
まず、相続は、人が亡くなった時点で始まります。亡くなった方を「被相続人(ひそうぞくにん)」、財産を引き継ぐ方を「相続人」といいます。
本来は、相続人全員で「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ:誰が何を引き継ぐかを決める話し合い)」をして、不動産の名義変更などを済ませます。ところが、この手続きをしないうちに相続人の一人が亡くなると、その方の相続(二つ目の相続)も同時に始まります。これが数次相続です。
数次相続を家族の例で考えるとどうなる?
説明のために、仮の家族で考えてみます。
- 父が亡くなり、相続人は母・長男・長女の3人になりました。
- 父名義の家の手続きをしないまま数年が経ち、長男が亡くなりました。
- 長男には妻と子ども2人がいます。
この場合、父の家について話し合うのは、母・長女に加えて、長男の立場を引き継いだ「長男の妻と子ども2人」です。つまり、最初は3人だった話し合いが、5人に増えています。さらに時間が経って次の相続が起きれば、人数はもっと増えていきます。
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とはどう違う?
似た言葉に「代襲相続」があります。違いは、相続人が亡くなった「順番」です。
数次相続
- 亡くなった順番:被相続人が先、相続人が後
- 引き継ぐ人:亡くなった相続人の相続人(配偶者・子など)
- 亡くなった相続人の配偶者:話し合いに加わる
代襲相続
- 亡くなった順番:相続人が先、被相続人が後
- 引き継ぐ人:亡くなった相続人の子(孫など)
- 亡くなった相続人の配偶者:加わらない
数次相続では、亡くなった相続人の配偶者も話し合いに加わる点が大きな違いです。そのため、どちらに当たるかで、ハンコをもらう相手が変わります。
数次相続は、どんなときに起こりやすい?
数次相続は、相続の手続きを「急がなくても困らない」と感じて、後回しにしたときに起こりやすくなります。
実際にはどんな相談があった?
岡山の当事務所で実際にお受けしたご相談をご紹介します(特定されないよう、内容を一部変えています)。
あるご相談では、先代の方が亡くなったときの相続登記(不動産の名義を相続人に変える手続き)を忘れたままになっていました。その間に相続人の方も亡くなっていたため、確認すると相続人は10人以上に増えていました。
SORAで手続きを支援し、なんとか相続人の皆さまの協議がまとまりました。このように、人数が増えるほど、話し合いをまとめるまでの手間は大きくなります。
ほかにはどんなケースが考えられる?
次のような場面で、数次相続に気づくことがよくあります。
- 家や土地を売ろうとしたら、名義が祖父母のままだった
- 親の相続手続きを始めたら、その前の祖父の相続も終わっていなかった
- 会社の株式が先代の名義のままで、事業承継を進めようとしたら株主の相続人が増えていた
中小企業の場合、自社株が相続人の間で分散すると、会社の意思決定に影響することがあります。そのため、経営者の方も、株式の相続を早めに整理しておくことが大切です。
数次相続は、どんな流れで手続きを進める?
数次相続の手続きは、基本的に通常の相続と同じ流れです。ただし、確認する相続が複数あるため、一つひとつの手順に時間がかかります。
どんな順番で進める?
- 相続人を確定する
- 最初に亡くなった方と、その後に亡くなった相続人の両方について、生まれてから亡くなるまでの戸籍をそろえます。
- 集めた戸籍は「法定相続情報証明制度(法務局が相続人の一覧図を証明してくれる制度)」を使うと、その後の手続きで何度も提出せずに済みます。
- 財産を確認する
- 不動産は登記事項証明書(法務局にある不動産の記録)で、今の名義を確認します。
- また、預貯金や株式なども洗い出します。
- 遺産分割協議をする
- 亡くなった相続人の分は、その方の相続人全員が話し合いに加わります。
- 遺産分割協議書に署名・押印する
- 全員が署名し、実印(市区町村に登録した印鑑)を押して、印鑑証明書を添えます。
- 相続登記を申請する
- 法務局に名義変更を申請します。
- 途中の相続で引き継いだ人が一人だけの場合などは、最終的に引き継ぐ人へ1回の登記で名義を移せることがあります。そうでない場合は、相続の数だけ登記が必要です。
- 預貯金や株式の名義を変える
- 金融機関や会社ごとに手続きをします。会社の株式は、株主名簿(会社が株主を記録する帳簿)の書き換えが必要です。
数次相続では、何に気をつければいい?
数次相続では、相続人が亡くなったらその人の分はなくなる?
なくなりません。よくある勘違いですが、相続人が亡くなっても、その方が持っていた相続の権利は、配偶者やお子さんなど次の相続人に引き継がれます。そのため、手続きには、引き継いだ方全員のハンコが必要です。
相続登記はいつまでにすればいい?
2024年4月から、相続登記は義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(かりょう:行政上のペナルティとしてのお金)の対象になることがあります。
なお、義務化の前に起きた相続も対象です。この場合の期限は、2027年3月31日までとされています。すぐに話し合いがまとまらないときは、「相続人申告登記(自分が相続人であることを法務局に申し出る手続き)」で、義務を果たす方法もあります。
相続放棄の期限はどう考える?
相続放棄(財産も借金も一切引き継がないこと)は、原則として自分が相続人になったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。数次相続では、この3か月をいつから数えるかが複雑になることがあります。そのため、借金がありそうな場合は、早めにご相談ください。
数次相続では、相続人が増えると何が大変になる?
相続人が増えるほど、次のような事情を抱えた方が含まれやすくなります。
- 連絡先がわからない、面識がない
- 認知症などで判断が難しい(成年後見人:本人に代わって手続きをする人が必要になることがあります)
- 未成年(特別代理人:親に代わって手続きをする人が必要になることがあります)
- 海外に住んでいる
一人でも協力が得られないと、手続きは止まってしまいます。
税金や揉め事はどうする?
相続税などの税金については、税理士と連携して対応します。また、相続人の間で揉め事になっている場合は、弁護士と連携して対応します。
数次相続は、どんなときに専門家へ相談すべき?
次のような場合は、ご自身だけで進める前に、司法書士へのご相談をおすすめします。
- 不動産の名義が、祖父母など何代も前の方のままになっている
- 誰が相続人なのか、はっきりわからない
- 相続人が多い、または会ったことのない相続人がいる
- 相続人の中に、認知症の方・未成年の方・海外に住んでいる方がいる
- 会社の株式が先代の名義のままになっている
- 不動産の売却や、事業承継の予定がある
司法書士は、戸籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請などをお手伝いできます。相続税の申告が必要な場合は税理士と、相続人の間で争いがある場合は弁護士と連携して対応します。
結局、数次相続にはどう備えればいい?
数次相続は、相続の手続きを後回しにしている間に、次の相続が重なって起こります。ポイントをまとめます。
- 相続人が亡くなっても、その方の分は次の相続人に引き継がれる
- 手続きには、引き継いだ方を含めた全員のハンコが必要
- 時間が経つほど相続人が増え、話し合いをまとめる手間が大きくなる
- 相続登記は義務になっており、期限がある
いちばんの備えは、相続が起きたら、次の相続が重なる前に早めに手続きを済ませることです。なお、すでに名義が何代も前のままになっている場合も、今から手続きを始められます。気になることがあれば、司法書士法人SORAへお気軽にご相談ください。
よくある質問は?
Q1. 数次相続か代襲相続か、自分で見分けられますか?
亡くなった順番で見分けます。被相続人より後に相続人が亡くなっていれば数次相続、先に亡くなっていれば代襲相続です。戸籍で亡くなった日を確認すると判断できますが、家族関係が複雑な場合はご相談ください。
Q2. 何代も前の名義のままの土地でも、今から相続登記できますか?
できます。ただし、それぞれの相続について戸籍をさかのぼって相続人を確定する必要があり、相続人の人数も多くなりがちです。義務化前に起きた相続にも期限があるため、早めに着手することをおすすめします。
Q3. 会ったことのない相続人がいる場合は、どうすればいいですか?
戸籍の附票(ふひょう:住所の移り変わりが記録された書類)で住所を確かめ、お手紙などで事情をお伝えするのが一般的です。初めて連絡する相手には、相続の経緯をわかりやすく伝えることが大切です。どう連絡すればよいか迷う場合も、ご相談ください。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
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