相続人の中に連絡が取れない方がいる場合は、まず戸籍を集めて相続人を確定し、住民票の住所まで調べます。そのうえでお手紙を送り、話し合いへの協力をお願いします。反応がなければ弁護士の名前で通知を出し、それでも応じてもらえないときは家庭裁判所の調停などを検討します。行方そのものが分からない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選んでもらう方法があります。連絡が取れない相続人を外したまま、手続きを進めることはできません。
結論として、連絡が取れない相続人がいたらどうする?
段階を踏んで、少しずつ働きかけを強めていくのが基本です。
- 戸籍を集めて、相続人が誰なのかを確定する
- 戸籍の附票(ふひょう:住所の移り変わりが記録された書類)や住民票で、今の住所を調べる
- ご本人の名前でお手紙を送り、話し合いを呼びかける
- 反応がなければ、弁護士の名前で通知を送る
- それでも反応がなければ、家庭裁判所の調停などを検討する
本人ではなく弁護士の名前で手紙が届くことで、反応が返ってくる場合があります。
なぜ、相続人全員と連絡を取る必要があるの?
遺産分割協議(亡くなった方の財産を、誰がどう受け継ぐかを決める話し合い)は、相続人全員で行う必要があるからです(民法907条1項)。一人でも欠けたまま決めた内容は、原則として有効になりません。
実際の手続きでも、全員の協力が求められます。たとえば、銀行で預金を解約するときや、法務局で不動産の名義を変える「相続登記」をするときには、戸籍上の相続人全員の実印や印鑑証明書などを求められるのが一般的です。
また、2024年4月1日から相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料(行政上の金銭のペナルティ)の対象になり得ます。連絡が取れないからといって、そのままにしておくのはおすすめできません。
どんなケースで連絡が取れなくなるの?
相続人と連絡が取れない背景は、ご家庭によってさまざまです。よく見られるのは、次のような状況です。
- 長年疎遠になっている兄弟姉妹がいる
- 前の配偶者との間のお子さんなど、普段まったく交流のない相続人がいる
- 住所は分かっているが、手紙や電話に返事がない
- 住民票の住所に住んでおらず、どこにいるのか分からない
会社を経営されていた方が亡くなり、会社の株式が遺産に含まれる場合も注意が必要です。株式の分け方が決まらないと、株主としての権利をスムーズに使えず、会社の運営に影響が出るおそれがあります。
実際にはどんなご相談があった?
当事務所に寄せられたご相談の一部をご紹介します(内容は一部変更しています)。
ケース1:疎遠になったご兄弟と連絡が取れない
長年疎遠になっていたご兄弟と連絡が取れず、相続の話を進められないというご相談でした。お手紙を作成してお送りしたところ、法定相続分(民法で定められた取り分の目安)の割合で分けるという内容で、遺産分割協議がまとまりました。
ケース2:相続人であるご親族と、どうしても連絡が取れない
相続人であるご親族と連絡が取れず、手続きが止まってお困りでした。このケースでは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、手続きを進めました。
手続きはどんな流れで進めるの?
ステップ1:相続人をどう確定する?
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、相続人が誰なのかを確定します。戸籍をたどる中で、ご家族も知らなかった相続人が見つかることもあります。
ステップ2:今の住所はどう調べる?
相続人の戸籍の附票や住民票を取り寄せ、現在の住所を調べます。連絡先が分からなくても、ここで住所が判明することがあります。
ステップ3:最初の連絡はどうする?
ご本人の名前でお手紙を送り、話し合いへの協力をお願いします。相続が始まったこと、財産のおおまかな内容、今後の進め方、連絡先などを、落ち着いた言葉で伝えるのがポイントです。連絡がない場合に、「訴訟等を検討する」といった少し脅しのような文言を記載したいという方もいらっしゃいますが、相手の心証が悪くなることも多く、あまりお勧めできません。
ステップ4:返事がないときはどうする?
弁護士の名前で通知を送ることが多いです。差出人が弁護士になることで、事の重さが伝わり、反応が返ってくる場合があります。
ステップ5:それでも進まないときはどうする?
家庭裁判所の手続きを検討します。状況によって、主に次の2つに分かれます。
- 住所は分かるが話し合いに応じない場合:遺産分割調停(家庭裁判所で、調停委員を交えて話し合う手続き)を申し立てます。調停でまとまらない場合は、裁判所が分け方を決める「審判」に移ります。
- 行方が分からない場合:不在者財産管理人(行方不明の人に代わって財産を管理する人)の選任を家庭裁判所に申し立てます(民法25条)。管理人が遺産分割協議に参加するには、さらに家庭裁判所の許可が必要です(民法28条)。
気をつけておきたい点は?
連絡が取れない相続人を外して進められる?
できません。相続人である以上、連絡が取れないまま手続きを進めることはできません。銀行も法務局も、戸籍上の相続人すべての印鑑などを求めてきます。「長く会っていないから」「相続を放棄するだろうから」といった理由で外すことはできない点に注意しましょう。
司法書士が代わりに交渉してくれる?
司法書士は、相手方との交渉を代わりに行うことはできません(弁護士法72条)。交渉が必要な場合は、弁護士に依頼することになります。司法書士がお手伝いできるのは、戸籍の収集、お手紙の作成、家庭裁判所に出す書類の作成、相続登記などです。
手紙はどんな書き方に気をつける?
感情的な表現や、一方的に分け方を決めつける書き方は避けましょう。相手が身構えてしまい、かえって話し合いが遠のくことがあります。
不在者財産管理人を選べば、自由に分けられる?
不在者財産管理人は、行方不明の相続人の利益を守る立場です。そのため、一般的には、その相続人の法定相続分を確保する内容で協議を進めることになります。また、申立てには費用がかかり、事案によっては予納金(管理人の報酬などに充てるため、あらかじめ裁判所に納めるお金)が必要になることがあります。金額は事案によって異なります。
どんなときに専門家へ相談したほうがいい?
次のような場合は、早めに専門家へご相談ください。
- 戸籍の数が多く、相続人が誰なのか自分では確定できない
- 相続人の住所が分からない、または住民票の住所に住んでいない
- お手紙を出したのに、返事がない
- 遺産に不動産があり、相続登記が必要になる
- 遺産に会社の株式があり、会社の運営に影響が出そう
- 相手が強く反発しているなど、争いになりそう
司法書士法人SORAでは、戸籍の調査、お手紙の作成、不在者財産管理人の選任申立ての書類作成、相続登記などをお手伝いしています。相手方との交渉や揉め事、税金に関わる部分については、弁護士・税理士と連携して対応します。
結局、まず何から始めればいい?
まずは戸籍を集めて相続人を確定し、住所を調べるところから始めましょう。そのうえで、お手紙、弁護士名での通知、家庭裁判所の手続きと、段階を踏んで進めていきます。
連絡が取れない状態を放置すると、預金の解約や相続登記が進まず、時間がたつほど次の相続が重なって関係者が増えることもあります。「どこから手をつければいいか分からない」という段階でも構いません。岡山で相続のお困りごとがあれば、司法書士法人SORAへお気軽にご相談ください。
よくある質問は?
Q1. 連絡が取れない相続人を除いて、遺産分割協議をしてもいいですか?
A. いいえ。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けると、その協議は原則として有効になりません。連絡が取れない場合は、この記事でご紹介した手順で対応を進めます。
Q2. 行方不明の相続人が、生きているかどうかも分からない場合は?
A. まずは不在者財産管理人の選任を検討します。生死が分からない状態が7年以上続いている場合などは、家庭裁判所に「失踪宣告」(法律上、亡くなったものとみなす制度)を申し立てる方法もあります(民法30条)。どちらが適しているかは状況によって異なりますので、ご相談ください。
Q3. 司法書士に、相手との話し合いを代わりにお願いできますか?
A. 司法書士は、相手方との交渉を代わりに行うことはできません。交渉が必要な場合は弁護士へのご依頼となります。司法書士法人SORAでは、弁護士と連携して対応しますので、まずはお気軽にご相談ください。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
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