結論からお伝えすると、相続登記はご自身で申請することができます。登記は本人が申請するのが基本で、専門家に頼むかどうかは自由だからです。
ただし、戸籍集めや書類作成のための調べものが必要です。平日に法務局や役所へ出向く時間も欠かせません。また、法務局は手続きの方法は案内してくれます。しかし、その内容で将来困らないかというリスクまでは教えてくれません。「自分でできる」ことと「正しく漏れなくできる」ことは別です。この点を押さえておきましょう。

そもそも相続登記を自分でしてもいいの?
はい、問題ありません。相続登記とは、不動産の名義を変える手続きです。亡くなった方(被相続人)名義の土地や建物を、相続した方の名義に変えます。相続による名義変更は、相続人が申請できると定められています。司法書士などの代理人を立てるかどうかは、ご本人が選べます。
なお、相続登記は2024年4月1日から義務になりました。申請の期限は、相続で不動産の取得を知った日から3年以内です。根拠は不動産登記法76条の2です。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条)。過料とは、行政上のペナルティとして支払うお金です。2024年4月より前に発生した相続も対象です。こちらは2027年3月31日までが期限とされています。
「いつかやろう」と後回しにしにくくなりました。自分でやるか、専門家に頼むかを早めに決めておくことが大切です。
実際にはどんなケースがある?
当事務所にいただいたご相談から、2つのケースをご紹介します。内容は一部変更しています。
ケース1:自分で始めたけれど、途中から頼むことはできる?
初回相談にお越しいただいた方が、ご自身で手続きを進めることになりました。後日あらためてご連絡がありました。「やってみたら難しかったので、やはりお願いしたい」とのご依頼でした。
手順を聞くと「これならできそう」と感じるかもしれません。実際に戸籍を読み解いて書類を整えると、想像以上に手間がかかることがあります。途中からでもご相談いただけますので、無理に抱え込まないことが大切です。
ケース2:自分で登記したのに、漏れが見つかることはある?
ご自身で相続登記を済ませていたお客様が、不動産を売却することになりました。売却に向けて登記簿を調べたところ、登記漏れが見つかりました。自宅の前面道路(家の前の道路部分の土地)の相続登記がされていなかったのです。売却の前にこの土地の相続登記をする必要が生じ、その分、売却が遅れてしまいました。
申請した登記そのものは完了していても、漏れがあれば手続きのやり直しになります。これが「できる」と「正しくできる」の違いです。
相続登記を自分でするときの流れは?
おおまかな流れは次のとおりです。
申請の前に何を準備する?
- 相続する不動産を調べる:権利証や固定資産税の納税通知書などで確認します。権利証とは、登記済証・登記識別情報のことです。名寄帳(市区町村がまとめた、その人が持つ不動産の一覧)も手がかりになります。2026年2月2日からは、「所有不動産記録証明制度」も使えるようになりました。法務局で、亡くなった方名義の不動産を一覧で証明してもらえる制度です。
- 戸籍などを集める:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せます。相続人全員の戸籍なども集め、相続人が誰かを確定させます。
- 誰が相続するかを決める:遺言書があればその内容に従います。なければ相続人全員で話し合います。話し合った内容は遺産分割協議書にまとめ、署名と実印の押印をします。遺産分割協議書とは、誰がどの財産を受け継ぐかをまとめた書面です。
準備ができたら、どう申請する?
- 申請書を作り、登録免許税を計算する:登録免許税は登記のときに国に納める税金です。原則として、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
- 法務局に申請する:不動産の所在地を担当する法務局へ提出します。提出方法は、窓口・郵送・オンラインのいずれかです。
- 補正に対応し、完了書類を受け取る:書類に不備があると、補正の連絡が来ます。補正とは、修正の指示のことです。完了すると、新しい権利証にあたる登記識別情報通知を受け取ります。
文字にすると6つですが、2の戸籍集めだけでも手間がかかることがあります。本籍地が何度も変わっている方の場合は、取り寄せに時間がかかることがあります。
相続登記を自分でやるとき、何に気をつければいい?
相続登記を自分でやれば、費用はかからない?
かからないのは司法書士への報酬だけです。登録免許税や、戸籍・住民票・評価証明書などの取得費用、郵送料は実費です。実費は、ご自身で申請しても同じようにかかります。なお、一定の要件を満たす土地は、登録免許税が免除される措置があります。この措置の期限は、2027年3月31日までとされています。
法務局で聞けば安心?
法務局では、登記手続案内を利用できます。ただし、案内されるのは手続きの方法です。漏れの有無や分け方のリスクまで、確認してくれるわけではありません。ケース2のように、登記が完了しても漏れに気づかないままになることがあります。
平日に時間はとれる?
法務局や役所の窓口は、基本的に平日の日中しか開いていません。郵送やオンラインを使える場面もあります。問い合わせや補正の対応も含め、平日に動ける時間を確保しておく必要があります。
頼むなら誰に頼めばいい?
登記申請を代理できるのは、司法書士(または弁護士)です。行政書士や税理士には、登記申請を代理する権限がありません。また、相続税の申告や相続人同士の揉め事が関わる場合もあります。その場合は、税理士・弁護士と連携して対応します。
どんなときは専門家に相談したほうがいい?
次のような場合は、早めに司法書士へご相談いただくと安心です。
- 平日に法務局や役所へ行く時間がとりにくい
- 相続人の人数が多い、または相続人の中で連絡がとりにくい方がいる
- 数次相続(相続登記をしないうちに、相続人の方も亡くなっている状態)になっている
- 古い戸籍が読みにくく、相続人が誰なのか判断に迷う
- 不動産が複数ある、私道や前面道路の持分があるなど、漏れが心配
- 売却や担保設定など、登記後の予定が決まっている
- 自分で始めたものの、途中で行き詰まってしまった
- 相続税の申告や、相続人同士の揉め事が関わりそう(税理士・弁護士と連携して対応します)
結局、相続登記は自分でやるか頼むか、どう決める?
相続登記は、ご自身で申請できる手続きです。時間をとれて、調べることが苦にならない方にとっては、選択肢のひとつになります。
一方で、ご自身で申請しても実費はかかり、法務局はリスクまでは教えてくれません。登記漏れは、売却などの場面で初めて見つかることもあります。大切なのは「できるかどうか」だけではありません。「正しく漏れなくできるか」という目線で判断していただくのがおすすめです。
岡山で相続登記にお困りの方は、司法書士法人SORAへお気軽にご相談ください。ご自身で進めるか迷っている段階でも、途中まで進めている段階でも構いません。
よくある質問は?
Q1. 相続登記を自分でやると、費用はどのくらい変わる?
変わるのは司法書士報酬の部分です。登録免許税や戸籍などの取得費用は実費です。実費は、ご自身で申請しても同じようにかかります。実費の額は不動産の評価額や戸籍の通数によって異なります。
Q2. 相続登記を途中まで自分で進めてから、依頼することはできる?
できます。実際に、ご自身で始めた後に「難しかったので」とご依頼いただいたケースもあります。途中まで集めた書類があれば、ご相談の際にお持ちください。
Q3. 相続登記はいつまでにすればいい?
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内です。2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。その場合は、2027年3月31日までとされています。期限が近い場合や、すぐに遺産の分け方が決まらない場合も、まずはご相談ください。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
司法書士法人SORA|〒700-0977 岡山市北区問屋町11-106 TOIYACHO BOOTH BLD 306号|TEL 086-242-6866
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