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相続登記に必要な戸籍はどこまで?集める範囲と注意点を司法書士が解説

相続登記とは、亡くなった方の不動産の名義を、相続人に変更する手続きです。この手続きでは、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまで」のすべての戸籍を集めます。

あわせて、相続人全員の「現在の戸籍謄本」も必要です。相続人の戸籍は、亡くなった方の死亡日より後に発行されたものを用意してください。

なお、戸籍そのものに有効期限はありません。そのため、以前に取り寄せた古い戸籍も基本的には使えます。

相続登記に必要な戸籍集めのイメージ

結局、どの戸籍を集めればいいの?

相続登記で必要になる戸籍は、大きく分けて次の2つです。

  • 亡くなった方(被相続人):出生から死亡までのすべての戸籍。誰が相続人なのかを確定するためです。なお、被相続人とは、財産を残して亡くなった方のことです。
  • 相続人全員:現在の戸籍謄本(被相続人の死亡日より後に発行されたもの)。被相続人が亡くなった時点で、相続人が生きていたことを証明するためです。

相続登記の申請では、「相続があったことを証明する書類」の提出が必要です。これは法令で定められています(不動産登記令7条1項5号ロ)。そして、その中心となるのが、これらの戸籍です。

なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要なの?

誰が相続人なのかを、もれなく確認するためです。たとえば、前の結婚で生まれた子どもがいれば、その方も相続人になります。養子や認知した子どもも同様です。しかし、こうした情報は、昔の戸籍にしか載っていないことがあります。

また、戸籍は一生に1通ではありません。結婚や転籍のたびに、新しい戸籍が作られるからです。転籍とは、本籍地を別の場所へ移すことです。さらに、法律の改正で戸籍が作り直されることもあります。そのため、1人の方の一生分を確認するには、何通もの戸籍が必要です。つまり、古い戸籍までさかのぼって集めることになります。

集める戸籍には、主に次の種類があります。

  • 戸籍謄本(こせきとうほん):現在の戸籍に載っている全員分の写し
  • 除籍謄本(じょせきとうほん):全員が結婚や死亡などで抜け、閉じられた戸籍の写し
  • 改製原戸籍(かいせいげんこせき):法改正で作り直す前の、古い形式の戸籍の写し

相続人の戸籍はどこまで必要なの?

基本は、相続人全員の現在の戸籍謄本です。ただし、相続人の顔ぶれによっては、さらに戸籍が必要になります。

  • 子どもが先に亡くなり、孫が相続する場合:亡くなった子どもの戸籍も必要です。具体的には、その子の出生から死亡までの戸籍です。このように、亡くなった子に代わって孫が相続することを代襲相続といいます。
  • 子どもがおらず、兄弟姉妹が相続する場合:父母それぞれの戸籍も必要です。具体的には、亡くなった方の父母の出生から死亡までの戸籍です。さらに、祖父母なども亡くなっていることがわかる戸籍も必要になります。

このように、相続人の範囲が広がるほど、集める戸籍の数も増えていきます。

実際には、どんなことで困っている方が多いの?

多いのは、「戸籍を取り寄せてみたものの、内容が読み取れない」というお悩みです。

当事務所にも、このようなご相談がありました。「相続の手続きをしたいけれど、戸籍が読み取れずに困っている」というものです。このケースでは、まず相続登記のご依頼をお受けしました。そのうえで、登記に必要な戸籍の収集もあわせてお引き受けしました。

古い戸籍は、手書きの崩し字や旧字体で書かれていることが少なくありません。また、当時の地名が今とは違っていることもあります。さらに、どの記載から一つ前の戸籍をたどればよいのか、分かりにくいこともあります。そのため、一般の方が読み解くのは、簡単ではないのが実情です。

戸籍集めは、どんな流れで進めるの?

戸籍は「亡くなった時点」から集め始めます。そこから「生まれた時点」へ向かって、順番にさかのぼっていきます。

取り寄せる順番は?

  1. 最後の本籍地を確認する:まず、亡くなった方の最後の本籍地を確認します。分からない場合は、本籍地の記載がある住民票の除票などで確認できます。住民票の除票とは、亡くなって抹消された住民票のことです。
  2. 死亡の記載がある戸籍を取り寄せる:次に、最後の本籍地の市区町村に請求します。
  3. 一つ前の戸籍をたどる:取り寄せた戸籍には、「どこから移ってきたか」が書かれています。それを手がかりに、前の本籍地の戸籍を請求します。この作業を、出生の記載がある戸籍まで繰り返します。
  4. 相続人の戸籍を取り寄せる:あわせて、相続人全員の現在の戸籍謄本を集めます。
  5. 相続関係を整理する:集めた戸籍をもとに、相続関係説明図を作ります。相続関係説明図とは、家系図のように相続人の関係を示した図です。また、法定相続情報証明制度を利用する方法もあります。これは、法務局が相続人の一覧図に証明を付けてくれる制度です。利用すれば、銀行などの手続きで戸籍の束を何度も出さずに済む場合があります。
  6. 法務局に登記を申請する:最後に、遺産分割協議書などの書類とあわせて申請します。遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方を決めた書面です。

本籍地が遠方にある場合は?

本籍地が遠方にある場合は、郵送で請求することもできます。また、2024年3月からは「広域交付」が始まりました。これにより、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍をまとめて請求できます。ただし、請求できるのは本人・配偶者・父母や子などの直系の家族に限られます。たとえば、兄弟姉妹の戸籍は対象外です。そのほかにも条件があります。

気をつけておくべきことは?

昔に取った戸籍は使えないの?

戸籍そのものに有効期限はないため、以前に取り寄せた戸籍も基本的には使えます。ただし、一定の決まりはあります。相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日より後に発行されたものが必要です。これは、被相続人が亡くなった時点で、相続人が生きていたことを証明するためです。

また、銀行など登記以外の提出先にも注意が必要です。「発行から○か月以内」といった期限を、独自に設けている場合があるためです。そのため、提出先ごとに確認しておくと安心です。

戸籍の取り寄せだけを司法書士に頼めるの?

戸籍の収集だけをご依頼いただくことはできません。司法書士が戸籍を取り寄せられる場合は、限られています。具体的には、相続登記など司法書士の業務のご依頼をいただいた場合です。そのうえで、その業務に必要なときに限られます。このように、司法書士が業務のために戸籍を請求することを「職務上請求」といいます。読み方は「しょくむじょうせいきゅう」です。

相続登記には期限があるの?

2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。期限は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内です。根拠は不動産登記法76条の2です。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象となることがあります。こちらの根拠は同法164条です。過料とは、行政上の制裁金のことです。

戸籍集めは、思った以上に時間がかかることがあります。そのため、期限を意識して、早めに取りかかることをおすすめします。

税金や相続人どうしの話し合いはどうする?

相続税の申告が必要な場合もあります。また、相続人の間で話し合いがまとまらないこともあります。このような場合は、税理士・弁護士と連携して対応します。

どんなときに専門家へ相談したほうがいいの?

次のような場合は、早めに司法書士へ相談することを検討してみてください。

  • 取り寄せた古い戸籍が読み取れない
  • 結婚や転籍が多く、本籍地が何か所にも分かれている
  • 子どもがおらず、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
  • 代襲相続など、相続人の関係が複雑になっている
  • 前の結婚の子どもや養子など、把握していない相続人がいるかもしれない
  • 相続人が多い、または遠方に住んでいる
  • 仕事が忙しく、平日に役所や法務局へ行く時間が取れない
  • 会社の株式や役員の変更登記など、会社の手続きも関係しそう

司法書士に相続登記をご依頼いただくこともできます。その場合は、登記に必要な戸籍の収集もあわせてお任せいただけます。

結局、まず何から始めればいいの?

相続登記に必要な戸籍のポイントは、次の3つです。

  • 亡くなった方の戸籍は、出生から死亡までをすべて集める
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本を、亡くなった日より後の発行日で用意する
  • 戸籍に有効期限はなく、古い戸籍も基本的には使える

まずは、亡くなった方の最後の本籍地を確認するところから始めてみてください。途中で戸籍が読めなくなることもあるかもしれません。また、どこまで集めればよいか迷うこともあるでしょう。そのようなときは、一人で抱え込まずにご相談ください。岡山市の司法書士法人SORAでは、相続登記のご依頼をお受けしています。あわせて、必要な戸籍の収集もお引き受けしています。

よくある質問は?

Q1. 何年も前に取った戸籍は、使えますか?

戸籍に有効期限はないため、基本的には使えます。ただし、相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日より後に発行されたものが必要です。それより前に発行された相続人の戸籍しかない場合は、取り直しが必要になります。

Q2. 戸籍の取り寄せだけを司法書士に頼めますか?

戸籍の収集だけをご依頼いただくことはできません。相続登記など、司法書士の業務をご依頼いただく必要があります。そのうえで、手続きに必要な範囲で取り寄せる形になります。

Q3. 本籍地が遠くて、役所に行けない場合はどうすればいいですか?

本籍地の市区町村に郵送で請求する方法があります。また、広域交付を使えば、近くの市区町村の窓口でまとめて請求できる場合があります。手間や時間をかけられない場合もあるでしょう。その場合は、相続登記とあわせて司法書士にご依頼いただくこともできます。

※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。

この記事の監修者

柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士

  • 岡山県司法書士会所属 第861号
  • 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
  • 得意分野:相続・遺言・不動産取引

香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。

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