相続相談は、準備ができていない状態でもお受けできます。資料が何もなくても大丈夫です。家族が亡くなったばかりで、何をすればよいかわからない。そんな段階でのご相談も可能です。
ただし、詳しいお見積りには、相続相談の準備として次の書類があると便利です。不動産の評価額がわかる「固定資産課税明細書」か「名寄帳(なよせちょう)」です。これらがあれば、より明確なお見積りが可能になります。また、権利証や財産関係の資料、戸籍謄本などもあればお持ちください。
結論として、相続相談の準備では何を持っていけばいい?
資料がそろっていなくても、まずはご相談いただけます。そのうえで、相続相談の準備として、あればお持ちいただきたいものは次のとおりです。
- 固定資産課税明細書(または名寄帳):どこにどんな不動産があり、評価額はいくらか
- 権利証:亡くなった方がどの不動産を持っていたかの手がかり
- 財産関係の資料:預貯金・株式・保険・借入れなど、不動産以外の財産
- 戸籍謄本関係:亡くなった方の家族関係と、誰が相続人になるか
- その他の資料:遺言書や、手続きの手がかりになる書類など
すべてそろえる必要はありません。「見つかったものだけ」「どれが必要かわからないので全部」という形でも大丈夫です。
それぞれの資料は、何のために使う?
相続の手続きでは、大きく3つのことを確認しながら進めます。「誰が相続人か」「何を相続するか」「どう分けるか」です。相続相談の準備で集める資料は、最初の2つを早く正確に把握するのに役立ちます。
固定資産課税明細書・名寄帳はどう使う?
固定資産課税明細書は、固定資産税の納税通知書に同封されている書類です。納税通知書は、毎年春ごろに市区町村から届きます。不動産の所在地や評価額が書かれています。
名寄帳は、同じ市区町村内で、ある人が持っている不動産を一覧にした帳簿です。税金のかからない土地(私道など)が載っていることもあります。そのため、不動産の漏れを防ぐ手がかりになります。相続人であれば、不動産のある市区町村の窓口で取得できます。
これらが見積りに役立つ理由は、次のとおりです。相続登記とは、不動産の名義を相続人に変える手続きです。この登記には、登録免許税(登記のときに国に納める税金)がかかります。登録免許税は、原則として固定資産の評価額をもとに計算されます。つまり、評価額がわかれば、全体像と費用を具体的にお伝えしやすくなります。
権利証はどう使う?
権利証は、不動産の所有者が登記を受けたときに交付される書類です。古いものは「登記済証」という形です。一方、平成17年以降のものは「登記識別情報通知」という形になっています。相続登記の手続き自体には、原則として必要ありません。ただし、亡くなった方がどの不動産を持っていたかを知る手がかりになります。
財産関係の資料には何がある?
たとえば、預金通帳やキャッシュカード、証券会社からの取引報告書です。さらに、生命保険の証券、借入れの契約書や返済予定表なども含まれます。借金などのマイナスの財産も、相続の対象になります。
戸籍謄本関係は何が必要?
相続人を確定するには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要です。あわせて、相続人の方の戸籍も必要になります。戸籍謄本は、家族関係が記載された公的な証明書です。お手元にある分だけで構いません。足りない分は、ご依頼をいただければ集めることも可能です。
その他の資料には何がある?
たとえば、遺言書や、亡くなった方の住民票の除票です。除票とは、亡くなったことが記載された住民票のことです。また、相続人の方々の連絡先がわかるメモなども役立ちます。「関係があるかわからない」書類も、念のためお持ちください。そのほうが判断がしやすくなります。
資料がほとんどない場合はどうなる?
資料が手元にない状態でも、ご相談は可能です。ここでは、実際にあったご相談をご紹介します。なお、個人が特定されないよう、内容を一部変えています。
ご相談の状況
亡くなった叔母さまの相続についてのご相談でした。叔母さまが不動産や預金を持っていたことは、わかっていました。しかし、それがどこにあるのかがわからない状態でした。
当事務所の対応
当事務所では、まず相続人調査と財産調査を行いました。相続人調査とは、戸籍を集めて、誰が相続人になるかを確定する作業です。こうして、相続の内容を明確にしました。そのうえで、その後の手続きをすべて代行しました。
このように、資料が少なくても、調査によって相続の全体像を整理できます。また、ご家族が亡くなって間もない段階のご相談にも対応しています。「何から手をつければよいかわからない」という方も、お気軽にどうぞ。
相談から手続き完了までは、どう進む?
一般的には、次のような流れで進みます。相続の内容によって、順番が前後したり、不要な手順があったりします。
- 初回相談:亡くなった方やご家族の状況、わかっている財産をお聞きします。資料がなくても構いません。
- お見積り:固定資産課税明細書や名寄帳があれば、評価額をもとに費用を具体的にお伝えします。
- 相続人調査:戸籍を集めて、誰が相続人になるかを確定します。
- 財産調査:不動産・預貯金などを調べ、相続する財産を一覧にします。
- 遺産の分け方の話し合い:相続人全員で、誰が何を相続するかを決めます。決まった内容は「遺産分割協議書(話し合いの結果をまとめた書面)」にします。
- 各種手続き:相続登記(不動産の名義変更)や、預貯金の解約・名義変更などを行います。
- 完了:必要な手続きがすべて終われば完了です。
相続税の申告が必要な場合は、税理士と連携して対応します。
相続相談の準備で、気をつけることは?
相続相談の準備が整うまで待つべき?
待つ必要はありません。資料を探しているうちに、時間がたってしまうこともあります。それよりも、まずご相談いただき、何が必要かを一緒に確認しましょう。そのほうが、手続きを進めやすくなります。
期限のある手続きはどうする?
相続には期限のある手続きがあります。代表的なものが「相続放棄」です。相続放棄とは、借金なども含めて、一切の財産を相続しないことです。申立て先は家庭裁判所で、期限は原則として3か月以内です(民法915条1項)。この3か月は、自分が相続人になったことを知った時から数えます。詳しくは、裁判所の「相続の放棄の申述」のページでも確認できます。
借金があるかもしれない場合は、資料がそろっていなくても早めにご相談ください。相続するかどうか迷っている場合も同様です。
また、相続放棄を考えている場合は、財産の扱いに注意が必要です。亡くなった方の財産を処分したり使ったりすると、相続を認めたものとみなされます。その結果、放棄ができなくなることがあります(民法921条)。預金の引き出しや不動産の売却などをする前に、一度ご相談ください。
相続登記には期限がある?
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から、3年以内に登記をする必要があります。根拠は不動産登記法76条の2です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となります。過料とは、行政上のペナルティとして支払うお金です。なお、義務化より前に発生した相続も対象です。制度の詳細は、法務省の相続登記の申請義務化特設ページでも確認できます。
どんなときに、専門家へ相談したほうがいい?
次のような場合は、ご自身だけで進めるよりも、早めのご相談がおすすめです。
- 相続放棄など、期限のある手続きが関係しそうなとき:期限を過ぎると選べる方法が限られるためです。
- 誰が相続人になるのかはっきりしないとき:たとえば、亡くなった方にお子さんがいない場合です。兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることがあり、集める戸籍が多くなりがちです。
- 財産がどこにあるかわからないとき:不動産や預金の所在がわからない場合でも、調査から進めることができます。
- 亡くなった方が会社の株式を持っていた、または会社の役員だったとき:株式の相続手続きに加えて、役員の変更登記が必要になることがあります。役員の変更登記とは、会社の登記簿の役員欄を書き換える手続きです。申請期限は、原則として変更から2週間以内です(会社法915条1項)。事業の継続にも関わるため、経営者の方は早めのご相談をおすすめします。
- 相続人どうしで意見が分かれているとき:弁護士と連携して対応します。
- 相続税がかかりそうなとき:税理士と連携して対応します。
まとめると、相続相談の前に何を準備しておけばいい?
相続相談は、準備が整っていなくても始められます。ただし、詳しいお見積りには、固定資産課税明細書か名寄帳があると便利です。そうすれば、費用を明確にお伝えしやすくなります。権利証・財産関係の資料・戸籍謄本などは、見つかった分だけで構いません。
特に、相続放棄のように期限のある手続きには注意が必要です。その場合は、資料集めよりも先にご相談ください。司法書士法人SORAでは、岡山で相続にお悩みの方のご相談をお受けしています。「何から始めればいいかわからない」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問は?
Q1. 相続相談の準備が何もできていなくても、相談してよいですか?
はい、ご相談いただけます。お話をお聞きしたうえで、必要な資料や今後の進め方をご案内します。資料がない場合でも、相続人調査や財産調査から進めることができます。
Q2. 固定資産課税明細書が見つからないときは、どうすればいいですか?
不動産のある市区町村で名寄帳を取得する方法があります。たとえば岡山市内の不動産であれば、市役所の担当窓口で請求します。取り方がわからない場合も、まずはご相談ください。
Q3. 相続が起きてから、いつごろ相談すればいいですか?
できるだけ早めのご相談をおすすめします。相続放棄の期限は、原則として相続人になったことを知った時から3か月以内です。また、相続登記にも3年以内という期限があります。そのため、「落ち着いてから」と後回しにせず、早めにご相談ください。
※事例は実際のご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。
この記事の監修者
柚木 徹也(ゆのき てつや)
司法書士法人SORA 代表/司法書士
- 岡山県司法書士会所属 第861号
- 簡裁訴訟代理認定番号 第1112075号
- 得意分野:相続・遺言・不動産取引
香川大学法学部法学科卒業。2011年に司法書士試験に合格し、神戸の司法書士法人で相続手続き・不動産登記を中心に、商業登記・債務整理・遺言執行など幅広い業務に携わる。2016年に地元へ戻り個人事務所を開設、2021年8月に司法書士法人SORAを開設。「士業に相談するハードルを下げたい」という思いから、税理士など他士業と連携し、相談から手続きまで伴走できる体制づくりに取り組んでいる。
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